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「いいかい、みんな。客商売というのは、常に新しいことに挑戦しなければならない。OK? そこでだ。来週から、お店を昼から開けて、夕方までは茶藝館にしようと思う。これで、売り上げもアップするぞ!」 さすが、お店建て直しプロデューサー「デビッド・タオ」だけあって、売り上げアップのために日々努力を惜しまない。 「さて、そのためには、君たちにお茶の知識を身に付けてもらわなければね。これは、僕がわざわざ台湾各地から仕入れてきた茶葉だ。」 タオの目の前には、ずらっと10数種類のお茶が並んでいる。 「いい香りがするね、タオさん。早く飲んでみたいな!」 リーホンはそう言うと、子供のようにキラキラした瞳で、じっと見つめた。 (うっ..なんて可愛い目をするんだ..そんな目で俺を見つめるな。顔が火照ってくるじゃないか) 「さ、さて湯を注ぐぞ。まずは、みんなにお茶の味を知ってもらわなきゃな。」 タオは、沸騰したお湯を茶壺にゆっくりと注ぎながら説明を始めた。 「いいかい、まずは茶壺を温めるんだ。これで、茶葉の風味をより深く引き出すことができるんだ」 と、お湯を茶海(ちゃはい)に移し、慣れた手付きで茶葉をすくって茶壺に入れる。 「この茶葉は、標高1500メートルの高山で取れた特級品の高山金萱茶なんだ。僕は茶の味にはうるさいからね。発酵の度合いによってこの甘い香りが..」 説明はなおも続くが、お湯を入れると素晴らしい香りがみんなの鼻を刺激した。タオは、蒸らしたお茶を小さな茶杯に次々と注いでいった。 「いいか、みんな。飲む前に目で楽しむんだ。どうだい!この見事な金色、素晴らしいじゃないか!安い茶葉だと一煎目から、いきなり茶色いんだ。そういうのは、僕に言わせると..」 「あの〜、タオさん。飲んでもよろしい..でしょうか?」Raymondが、おそるおそる聞いた。 「まだだ!なんて、お前らはせっかちなんだ!まったく.. いいか、茶藝というのはゆっくりたしなむものだぞ。さあ、次は香りだ。香りは一度鼻腔に溜めてから、楽しむんだ。..ふうう、落ち着くなあ。僕はこれを一番気に入っていてね。なぜかというと..(中略)..さて、飲んでみようか!どうだい、Andy。感想は?」 「...ぬるいんですけど。あーだこーだ、いつもの長えうんちく聞かされてる間に、すっかり冷めて香りも飛んじゃったよ。」 「え?なんだい、後の方、なんて言ったか聞き取れなかったぞ。おっ、そういえば今日は月末で締め日だよなあ。今月は前月より、売り上げが多かったから、給料以外に特別手当てを出そうかな〜と思ってるんだが」 「大変美味しゅうございました。こんな良いお茶を選ばれるタオさんは、さすがお目が高い。僕はずっと前からあなたを尊敬していました!」 「ああ、そうだろう、ハッハッハッ!気に入ってくれて嬉しいよ」 「ねえ、タオさん。ぬるくなって、せっかくのお茶が美味しくなくなっちゃったよ。こういうのは熱いうちに飲んだ方がいいよね」 リーホンがそう言うと、一同は(こいつめ!せっかく機嫌が良くなって、手当てまで出そうとしてるのになんてこと言うんだ!)と怒りをこめて、にらんだ。 「..うん、それもそうだな。いやあ、僕の話が長すぎたな〜。もう1回煎れ直すよ!」
一同はあぜんとした。「なんだ?リーホンだと怒らないのかよ。やっぱり、タオさんってば、リーホンのことを..」
頬を染めながら、茶を煎れ直すタオを見て、みながそう気付くのは当然のことだった。 煎れ直したお茶をリーホンは幸せそうに飲み干し、その姿をぼんやりと見つめながら、タオは思った。 (リーホン..茶杯に触れるお前のぽってりとしたふくよかな唇は、なんて柔らかそうなんだ。 それに..なんて愛おしそうにお茶菓子をみつめるんだ。何か最中に思い出でもあるのかい? ああ、俺は..俺は..お前に見つめられる最中になりたい。そして、お前にかじられ、胃の中に入って溶けてしまいたい..) 「あーっ!タオさんてば、リーホンばっか見つめてるよお!アヤシーイ!」柏霖は、若さゆえの怖いもの知らずで誰もが心で思っている秘め事を叫んだ。 はっ!と我に返ったタオは、ますます頬が紅潮してくるのに気付き、あせった。 「いや、その..ち、違う、リーホンのあごに、ホクロが二つ並んでるのが、面白いなって..思ってさ!それに、富士額なんだなあー!芸者のカツラとか似合いそうだよな、ハハハー」 もう何がなんだか、自分の言ってることがわからなかったが、とにかくしゃべり続けなければ!取り繕わなければ!そんな思いに駆られて、ますますタオは饒舌になった。 (あーあ、わかりやすい人だなあ。まあ、そんなところがとっても可愛いんだけど) Jimmyは、そう思いながら彼をじっと見つめた。 そんな熱い視線に気付ず、タオはひたすらしやべり続けるのだった。 |
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