[PR]テレビ番組表
今夜の番組チェック


新・ナルシスト〜伝説の男〜
「しばらく旅に出ます。探さないでね♪」と、ママが書き置きをして店を出てしまってから、数カ月。
トニーは、悩んでいた。リンチェイ先輩やかつての恩師・張先生、古い女友達のマギーが、アメリカ合資の会社を作るので一緒に来ないか?と誘ってくれたからだ。
「でも..僕が店を放りだした後、若い子ばっかりで経営するのは無理だろう。ああ、どうしたらいいんだ..」トニーの眉間のシワがますます深くなっていった。
「そうだ、彼が帰国したと風の噂で聞いたことがある!彼に頼もう。」
ふと思いついた「彼」とは、店をプロデュースさせて建て直すことにかけては右に出る者はいないという伝説の男「デビッド・タオ」氏のことだ。
さっそく、彼に連絡を取ることにした。ロス帰りの、合理的な考え方の彼とはあっという間に契約の話が進んだ。
いよいよ、明日から伝説の男がこの店「ナルシスト」を支配する。

Leehomリーホンは、今夜もピアノに向かっていた。
この仕事を始めて、はや半年。最初は緊張して、ただ無表情で指がこわ張ってしまうこともあったが、客のなめるようにまとわりつく視線にも..もう慣れた。
ピアニストとして雇われた彼でさえ、たまにはお客にサービスしなければならない。
リクエストをもらった時、チップを胸ポケットにつっこんでもらう時、軽く手の甲に感謝のキスをする。
そして..舞台から降りるとき、たまにだが、自慢の小尻をなでる酔っ払いの女性客もいる。そんな時リーホンは少し口角を上げ、客の指先をそっと取り、目をみつめるのだ。
「僕もすっかり、ここの水に染まっちゃったかな..でも我慢するんだ。ここで稼いで仕送りしたお金で、弟は大学に進むことができるんだから..」
そんな客あしらいを覚えた自分のことが、少々嫌になった。
翌夕、少し早めに出社したデビッドは帳簿とコンピュータを照らし合わせて、イライラしていた。
「なんだ、この衣装代とか、蛍光棒代って?そんなもん、自分持ちが当たり前だろ..」一つ一つの項目をチェックしながら、ブツブツとつぶやいた。
Andyやがて、店のすみずみまで掃除が行き届いているかどうか、ホコリを調べ始めた。続々と出勤してくる若手の一人、入店2カ月目の「Andy」が、彼に気づいた。
「あっ!」と小さい声を上げて、リーホンの耳元にボソボソとささやく。
「彼はさ、デビッドっていうんだけど、すごいやり手なんだよ。歌舞伎町で、いやこの新宿で名前を知らないものはいないな。彼のプロデュースでたくさんの店が、火の車を脱して経営が上向きになったんだ。」

へえ〜とリーホンは、驚きと尊敬が入り交じったまなざしで、ガラステーブルについた指紋あとをゴシゴシと拭きとっているデビッドを見つめた。Andyは、さらに続ける。
「だけど、説教臭いオヤジでさ..実は、僕が以前いた店でも、少しだけ世話になったんだ。焼き肉とか食べに連れてってくれたけど、話が長くってさ〜。まあ、2時間は一人でしゃべってるな。」
「おい、Andyじゃないか!久しぶりだな。しっかり働いているのか?」とデビッドは、嬉しそうな顔でこちらに向かってきた。
「デビッドさん、またお世話になります!いっしょに働けて光栄です!」と、なんとも幸せそうな笑顔で握手を交わした。
(なるほど..Andyのこういうところを見習わなきゃな..)と思っていると、デビッドと視線が合った。
「こちらは?」
「はじめまして、僕はNYから来ましたリーホンです。日本語、まだ下手ですがガンバリマス!」と、Andyとは違って心からの笑顔で、力強い握手を交わす。
David 「きみ、すごい美青年だねえ!しかも、NY出身だって!?僕は、ロスに自宅があるんだよ。またゆっくり話をしようよ。あっそれから、君はね。客とは話さなくていいから。ただ、ピアノを弾いてるだけでいいんだ。君はそれだけで、存在価値があるんだから..
ところで君、体の線は細いけど、いい二の腕をしているね?ピアノ以外に、何か楽器でも?」
そう言いながら、デビッドはリーホンの二の腕あたりを軽く揉むように、つかんだ。
「ヴァイオリンとギター、あとドラムも少し..」
「それは、ますます話が合いそうだ。ロスの自宅には、自慢のギターコレクションが置いてあるんだ。アメリカに帰ったら、ぜひ遊びにおいでよ!」
ええ、ぜひ!」リーホンは嬉しかった。この店に入ってから、大好きな音楽について話のできる相手がいなかったからだ。
「じゃあ、あとで!」と軽くウインクをして、デビッドは再び店内チェックに戻る。
Andyから「ふーん、えらく気に入られたもんだな。ロス出身の俺にさえ、あんなこと言わなかったのにな..やっぱりお前って、女だけじゃなく男も吸い寄せるタイプだな。」
と軽いイヤミを言われたようだが、リーホンの耳を素通りした。
「ああ、彼が上司なら上手くやっていけそうな気がする!彼とは気が合いそうだ。」

その後の夕礼では、デビッドの「新任の簡単なご挨拶」がえんえんと1時間半も続いたのだった...


陳柏霖 「あの〜、俺ここで、バイトしたいんだけど..」
と、開店前の掃除チェックをするデビッドに誰かが声をかけた。入り口に立っていた男は、おそらくまだ未成年だろう。大きめのTシャツにダボッとしたパンツという、今どきのだらしない若者の服装をしている。
「君、まだ未成年だろう?水商売の経験は?」
「ない。でも、なんとかなるさ。俺を雇うの?雇わないの?別に、よその店に行ってもいいんだけど。」
なんとも、態度の大きな少年だ。しかし、その大きな瞳は、人を惹き付ける強烈な光を宿していた。
(礼儀はなってないけど、こいつは磨けば使えるかもな..背は高いし、なにより美形だ。)デビッドは頭の中で、この少年がどれほど上客をつかまえられるか、計算していた。
「で、君の名前は?」
「チェン・ボーリン、19歳。好きなことは、HipHopダンスとギター」と早口に答えた。「俺が入れば、この店は天下無敵さ!」と、今までの態度に不似合いなエクボがくっきりと頬に浮かんだ。
「こいつ、可愛いかも..」デビッドは、そのエクボに人さし指を当て、グリグリとかき回してやりたい衝動に駆られた...

ついにお店は香港人から台湾出身者の手に。店の男の子も全て一新した「新生ナルシスト」に次回はあるのか!?(^^;)
文・妄想:(c)梨花/文章、画像の無断転載、流用は厳禁です。2003/09/09

[Back]..[Next].. [掲示板]
..Top