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「ナルシスト」ついに開店!
「ああ、忙しいわあ。お化粧もくずれちゃうわ!」

レスリーは昨日、北京から帰ってきたばかりだが、あくせくと働いている。
そう、今夜はいよいよ「ナルシスト」開店記念パーティなのだ。店の照明や、招待客の確認、化粧室のチェックに至るまで、しなければならないことがいっぱいなのだ。

「ママ、ちょっと休んでください。あとは、僕が確認しますから。」

黒服トニーは、心配だった。ママは一見、ちゃらちゃらした性格にみえるが、仕事に関してはすべて自分でチェックしなければ気が済まない完璧主義者なのだ。
心配なのはそれだけではない。昨日、一緒に連れて帰ってきたあの青年のことだ。あんな実直そうな青年に、この仕事がつとまるのか...

「トニーちゃん、お客様の人数確認は大丈夫なの?」

今日の招待客は、ママの昔なじみや前の店の常連客などだ。実質的な営業は、明日からになる。パーティとはいえ、店の様子、質が品定めされる大事な日だ。少しの手落ちもあってはならない。

「はい、VIPのウオンさんも、ツイさんも出席されるとのことです。招待状を出した常連さんたちも、ほとんどご出席のお返事をいただいてます。」

階段 「忙しそうっすね。自分も手伝います!」

二人が、声のするほうを見上げると、2階から1階へ下りる階段の踊り場のところに、その青年が立っていた。

「ああ、そうだね。じゃ、テーブルの準備なんかお願いしようかな。...ところで君、そういうスポーツウエアしか持ってないの?」

「あ、心配しないでください。今夜のパーティとかにはちゃんとしたジャケット着ますから!」

「ああ、そう。ならいいんだけど。なんだったら、僕の服を貸してあげるから遠慮なく言いなさいね。」

「はいっ!」文卓は思った。
「ああ、なんていい人なんだろう。この社長さんは。仕事の世話だけじゃなく、住むところ、着るものまで世話してくれるなんて...よおし!この人の期待に答えるように、体力の限界まで働くぞおっ!」

文卓は、まだ業務内容を知らされていなかった。

トニーは、文卓を呼んで耳打ちした。
「君、その...うちの業務内容知ってるよね?」
「サービス業だって、聞いてます。全力でがんばりますっ!」

明るくはきはきと答える文卓を見て、トニーは少々困り顔になった。そして、洗面台で髪の手入れに余念のない伊健(イーキン)を、呼んだ。

「イーキン、ちょっといいかい?ああ、もう髪のお手入れはそのくらいにして。大丈夫だよ、君は充分かっこいいんだから!」

やれやれ、という顔をしてイーキンは歩いてきた。

「君に頼みがあるんだ。彼、中国から来たばっかで何もわからないんだよ。君が先輩として、いろいろ仕事を教えてやってほしいんだ。」

「ああ、いいですよ。まかせてください。じゃ君、店の飾り付けしようか。」

自分のことさえ精一杯なイーキンにまかせるのは、少々心配だが...今は、パーティ準備が忙しくてかまっていられない。パーティ開始は、午後8時。もう、6時になっていた。
「ママ、そろそろ厄払いを始めましょうか?」

ここは、日本とはいえ、厄払いの儀式は皆にとって重要だ。 ママは古式にのっとった儀式を行い始めた。万事順調にいきますよに...そう、願いをこめながら。

「ちょ、ちょっと!あんたたち、何飾ってんの!」

ママが1オクターブ高い声で、叫んだ。
トニーが目をやると、折り紙で作った輪っかを交互につなぎ、カラフルな鎖状になったものを飾るイーキンと文卓がいた。

「だって、パーティって聞いたから..」
無表情で答えるイーキンを見て、ますますママは怒り始めた。

儀式
「幼稚園のお誕生会じゃないよっ!このお店にはバラの花を、飾るのよ!今すぐ、外しなさいっ!」
しまった!やっぱり、イーキンにまかせたのはまずかったか...トニーが苦渋の表情を浮かべていると、店のドアが開いた。時計は午後7時。
気の早い最初のお客様は、ママの旧友「ウオン・カーウアイ」様だった。

「相変わらず、厳しいね。ママ。ちょっと早いけど、待たせてもらうよ。これ、どうもありがとう。」
そう言って、招待状を差し出した。

ナル
[入店する?]


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